慢心は禁物だ、と日経さんは瞞着する
現在の東証の株価に信を置くのは、よっぽどのお人好しだけだろう。……と思うのだが、現在の日本は「よっぽどのお人好し」だらけになっているように見える。
日本市場では、日銀の上場投資信託(ETF)購入によって株価が支えられている点を忘れるわけにはいかない。実力以上の株価がついている企業も散見される。
「散見」ねえ。
こういうテーマで書くんなら、外せないことがあるんじゃないのかな。
何があっても日銀が買い支えるという状況は、企業から自浄能力を奪い、市場を歪ませていくだろう。
そんな日本の市場に
保有株の値上がりで余力が生まれた外国人投資家が、日本市場に資金をふり向けているという構図だ。
などというアホな「構図」が続くのなら、結局リフレは再度日本の社会を腐敗させるものでしかなかった、ということになる。
最初の一度は高橋是清によって悲劇がもたらされ、二度目は、もはやすべりまくりの芸になぜか観客がヒステリックに笑うだけ、という、末期的な笑劇となっている。
今回のリフレでよくわかったことは、よほど有能な為政者の元でないと、リフレは成功しないということだ。
何度も書いているように、「アベノミクスの最大の障害は安倍晋三」なのである。
「現政権は自民党の追い風になるように株価を支えたいのではないか」
都議選の時のこれを見てもわかるように、もはや株価は政権の人気取りの道具でしかない。
「なんでもいいから儲かりゃいいんだよ」という風潮が瀰漫するなら、二言目には「経済経済」と騒ぎつつ日本は負のスパイラルに落ち込んでいくことだろう。
はっきりしていることは、そうした「負のスパイラル」に対して、日経さんは有効な言論を持つことができない、ということだ。
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最低の選挙に最低の社説
実はみんなわかっているのだ「左が正しく右が間違っている」ということを
ネットを回遊していると、「ネトウヨ」という単語にちょくちょく出くわす。ネットで右翼的言説を主にする人たちに対する呼称で、おおよそは侮蔑的な文脈で語られる。そう呼ばれた方は「俺は中道だ」「私はただ日本が好きなだけの普通の日本人だ」などという。
しかし、もし「ネトウヨ」なるものが常に正しいことを言っているなら、たとえ侮蔑的な文脈で語られるとも、なんら恥じることはないだろう。対して「ブサヨ」という左翼に対する侮蔑的な言葉もあるが、そう呼ばれて「俺は中道だ」云々と言い返すのは、ほとんど見たことがない。
こうした非対称性は、実はみんな右翼的な言説が「間違っている」、という認識を薄々共有しているからこそ起こる現象であろう。
そんなわけで、人気取りには左翼的な、リベラルっぽいとされる言説の方が効果がある、ので社説のような事態になった。
日経さんは「無責任」と詰るわけだが、どうせ人気取りだけで本気で取り組むとかノミのすね毛ほどにも思っちゃいないから安心するといい。日経さんが信じる安倍ぴょんが、口先だけ「女性が輝く社会」だの「同一労働同一賃金」だの騒ぎ立てるだけで、全力でその場で足踏みしているのを見ればわかるだろう。
そういえば「安倍政権は中道左派」などという評価も目にした。これなんかも「実は左が正しい」と考えている証左であろう。
それなのになんで右傾化してしまうのかというと、
みんな安っぽいドラマが好きだからだ。
クラス委員が正しいことを言うよりも、ワルが正しいことを口にした方が、そこにドラマが生まれて興奮するのである。そんな安いドラマが好きなくせに自分のことは「リアリスト」だと自称したがる。
ワルは所詮ワルでしかない、というリアリズムは、リアリストのお気に召さないのだ。
現時点で福一廃炉は「無理」ということ
日経さんは自民党政府と東電に対しては、徹底的に「性善説」でしか語らないので、その理由に無理がある。「無理がある」のは「嘘がある」ということでもある。
新工程表の日程に無理があるんじゃないかとか、運河のない頃の地中海航路のような、日経さんの遠回しな表現から読み取れるのは、現時点で福一廃炉は技術的に「無理」だということだ。
それをさもできるかのように言い立てるのは、再稼働をスムーズにしたいという、ただそれだけの理由である。元住民のことを考えているのなら、もう少し他にもやるべきことがあるだろう。
現実主義者を名乗る人たちが、この現実から目をそらすのに必死な様は、寝小便を汗だと言い張る幼児のようで、その言い分を受け入れるにはかなり「無理がある」ということだ。
選挙が終わったら自民党と「アウフヘーベン」するんじゃない?
エネルギー政策では「2030年までの原発ゼロに向けた工程表づくり」を柱に据えた。代替電力の見通しやコスト増など経済への悪影響をどう抑えていくのかという戦略を詳しく聞きたい。
脱原発を謳うからには、日経さんにとって「敵」認定されるということか。
そんなに心配しなくても、選挙が終わったら「なーんのこっちゃい」と白けた結果が待ってると思うが。
アウフヘーベンに「大政翼賛」の意味がある、と閣議決定(笑)されたりするんじゃないのかね。ヘーゲルもびっくり。
長く全体主義者呼ばわりされたヘーゲルは、近年革命者として再評価されてるんだけどね。
もはや頼みは共産党だけか。わかっちゃいたけど、他の人がどのくらいそれをわかっているのか。ため息しか出ない。
日本の政治が「あべぴょん化」している
ちょっと前に書いたエントリーで、
小池が意図してやってるのかどうかは、まだはっきりとはしないが、もし日本ファなんとかが近い将来反原発だの消費税減税だの言い出したら、眉にたっぷり唾を塗る必要があるだろう。
と書いたら、本当にそう言い出した。
間抜けな脚本とダサい演出の舞台を見せられてるようで、こっちは辟易していても舞台上は大盛り上がり、というところか。
政治のレベル低下は、やはり低レベルの人間がずっとトップにおさまっていることに問題があるのだろう。日本の政治全体が「あべぴょん化」している。
もちろん、あべぴょんを「信じて」やまない日経さんも、「あべぴょん化」から逃れられてはいない。
権力政治家として、国政への足場づくりは今が勝機とみて勝負に出たとして、それ自体を否定するものではないが、ここでもなぜの疑問がぬぐい去れない。
政治的な影響力を保持するため、生き残りをめざすため、権力を求めるため、政治家が行動するのが悪いといっているのではない。政治のリアリズムを認めるのは、やぶさかではない。
しかしそれだけで行動されてはそのときの風や空気に流され、長い目で見た場合、有権者が選択を誤るおそれがある。大事なのは政治の旗印であり政策論である。
この部分だけ抜き出すと、まるであべぴょん批判のようだ。
つまり、やってることは同レベル、ということである。
結局、野党も与党も、そして日経さんも、仲良く「あべぴょん化」してしまってるわけで、こういうのって大政翼賛とかいうんじゃないの?
ただし、喜劇としての。
さらに、すべりまくりの。
「北朝鮮ありがとう解散」
寝言の羅列のような「表明」を、日経さんが批判するふりをしている。
日経さん、寝言に返事すると、寝てる人の寿命が縮むよ?
要するに国難=北朝鮮な訳で、北朝鮮が頑張ってくれたおかげで解散して色々とごまかせる、というわけだ。
本来の呼び名は「北朝鮮ありがとう解散」とすべきだろう。
表明とかいうのがなんで寝言かというと、憲法のケの字もなかったからだ。
とにかく、これをテコに憲法をいじりたい、というのが目的なので、それ以外の経済がどうしたとか財政がどうしたとかの話題は、全くどうでもいいというのが本音である。
憲法さえ改正できれば、後は野となれ山となれ、洪水が来ても知ったこっちゃない、というのが寝言つぶやく当人が見ている「夢」なのだ。もちろん、「夢」は「本当の欲望」の別名でもある。
あべぴょんが「憲法」に触れなかったと同じく、日経さんも「加計」に触れることなく社説を書いた。
寝言に対して寝言で返す、落語のような社説となっているわけだが、こういう場合は双方とも寿命が縮む、という具合に安らかな結末にならないものだろうか。