特効薬を求めて彷徨う日経さん
できるだけ自前の税収で歳出をまかなうのが地方自治の原則だ。小手先の改革ではなく、現行税制の課題と向き合うべきだろう。
なるほど、その通り。
じゃあ、消費税を全て地方税にしてしまえばいいな。
などということが対案として出されたなら、日経さんは大慌てで前言を翻しまくることだろう。
法人税収に開きがあるのは企業が東京などに集中しているためだ。格差をならすなら、企業の本社機能の地方移転や地方での起業などを後押しするのが筋だろう。
これについて、日経さんは以前の社説でこのように述べている。
地方を活性化する特効薬はない。
この諦念に対して、私はこのような対案を示した。
地方に在る企業の法人税を、県民所得の低さに比例させて下げてやれば良い。
そして、東京(島嶼部をのぞく)の企業についてはそれを倍にする。
これついては、同時期に自民党の役員から類似した案が示されたことがある。
結局それが立ち消えになったのは、おそらく「上つ方」の方からクレームがついたのだろう。
今からでも遅くないので、これをやったらいい。少なくとも日経さんが社説で文句をつけてる小手先だけの「改革」よりはマシなはずだ。
しかし、「その場で足踏み」を得意技とする、「やってる感」だけで支持される現政権には無理というものだろう。
ちゅーごくほーいもーとは何だったのか
TPPに賛成、という点において「保守」の方々と朝日新聞は一致している。
朝日新聞は新自由主義的な経済に賛同しているため、そして「保守」の方々は「TPPはちゅーごくほーいもーの一環だからだ!」と考えているためだ。
実際、日経さんも社説でそれを煽るようなことを書いている。
中国の国家資本主義に対抗する力も増すだろう。
しかし、五月の李克強首相来日で日中関係が「正常化」してから、それまでの「ちゅーごくほーいもー」は「異常だった」ことになったようだ。
あべぴょんは何事もなかったように「三原則」とかを口にし、日中の協力関係を謳っている。
もう「保守」の方々がTPPに賛成するいわれはなくなりそうなものだが、きっと色々なこじつけをひねり出して正当化しているのだろう。
アメリカが離脱し、中国との関係が「正常化」して、「保守」の側からすれば、もはや何のためのTPPやらわからなくなりつつある。新自由主義の側からは、もともと国際企業が国境越しに互いの消費者を搾取するためのものなので、そんな建前なぞどうでもいい。
建前を信じて踊った人たちは、骨折り損でくたびれの儲けすらなく、ただ貧しくなるだけだろう。
考えてみれば、TPPといい、日中正常化といい、さらに消費税増税といい、財界とそして朝日新聞の思惑に一致してしまっているのだが、それでよろしんですかね、「保守」の皆さんは。あべぴょんが憲法を改竄するまでは、泥水すすって辛抱辛抱なのかな。
だから中国は日本の農地を買いにやって来る TPPのためのレポート
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リスクなら最初からずっとそのままだが
なんかリスクとかほざいてるわけだが、今更それがマシマシになるわけもなく、ずっと以前からそれはそのままあるだけだ。
「経済・物価ともに下振れリスクのほうが大きい」という判断を示した。
経済とは経済成長のことだろう。そして物価も下振れ「リスク」があるとかなんとか。
そんな「リスク」は日銀が気にするようなことではない。金融政策だけではどうにもならないことが、この数年でわかったはずではないか。
要は政府、あの改憲以外頭にないバカをどうするかにかかっている。
それは「リスク」ではなく、「欠陥」である。
黒田総裁は記者会見で、経済の先行きリスクについて、米中貿易摩擦など保護主義や新興国市場の動向など海外要因が大きいとの認識を示した。
日銀は「欠陥」から目を背け、「リスク」の原因を国外に見ようとし、日経さんもまたそれに同調している。
日銀は海外経済には不安があるが、国内経済は好調な雇用を背景に賃金が上昇する好循環が続いていると判断している。この基調が崩れなければ物価上昇の勢いも増し、金融政策の正常化への道筋も見えてくる。
好調な雇用がワーキング・プアを増やすだけなら、失業率が減りつつも国内の消費は上向かず、そこへインフレがやってくれば阿鼻叫喚の様相を呈することになるだろう。実際、高橋是清がリフレをやった時はそうなった。
超低金利や、日銀による上場投資信託(ETF)の買い入れなど異例の金融緩和が長引けば、金融機関の収益悪化や、市場のゆがみといった副作用も大きくなる。金融政策の手綱さばきは難しさを増している。
それは「ゆがみ」ではなく、一度走り出したら降りることのできない暴走列車のようなものだ。
真の「リスク」は、日銀がそれを「ゆがみ」と捉え、正そうとすることにある。暴走する列車にいきなりブレーキをかければ、脱線して大惨事を引き起こすことになる。
日銀に求められるのは、もう行くとこまで行くしかない、と覚悟を決めることだ。
マルハナバチは地に堕ちるか
メルケルが「まずい」ことはもう何年も前から語られていたが、それでもマルハナバチのようによたよたと飛んでいた。
マルハナバチというのは、科学的に飛べないはずなのに飛んでいるハチで、以前はEUがそれに喩えられていた。
自らの飛行になぞらえるようにして、メルケルはEUも支え続けていた。
日本への外交の影響はどうか。
メルケルの「意向」はもはや、反故に等しいものと言えるだろう。
だいたい、メルケル自身が日本を好いてはいないのだ。
2015年に来日した時は、週末の0Lのように一泊二日でさっさと帰っていった。
しかも都内で開かれた公演では、「ドイツは過去と向き合っているので、国際社会に受け入れられている」と、自民党からすれば嫌味のような話を置き土産にしていった。
だが、今回の来日の「意向」では、同時にこんなリップサービスもしてくれている。
メルケル独首相、親日発言のわけ 欧州総局編集委員 赤川省吾 :日本経済新聞
この当時すでに、どうやら次の選挙がまずいことになりそうだ、という情勢になっていた。追い詰められての捨て鉢か、溺れるものの罠か。
ドイツもEUも、もはや飛ぶのに疲れたのかもしれない。
だが、いったん地に堕ちれば、あとは地べたを這いずり回る地虫の生活が待っているだけだ。
なお、マルハナバチが飛行する仕組みは、現在科学的に解明されつつあるそうだ。
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保護主義とは一体何を保護するのか
さて、懸念した通りロクでもない事態になりつつある。
ロクでもない事態とは、「好景気」である。
もちろん日本のことではない。あの腐ったラードを頭に乗っけた男が指揮をとるアンクル・サム(この呼び名もとんと聞かなくなった)のことだ。
トランプに反対するグローバリストたちは「トランプのような保護主義が蔓延すれば、とんでもない不況がやってくるぞ!」と呪詛を繰り返していた。が、さっぱりその気配が見えないどころか、米国の成長率は絶好調である。
日経さんは「経済的」に文句をつけられないので、
20世紀には主要国が高関税による経済ブロック化に突き進んだ末に、軍事的な対立が深まって第2次世界大戦につながった。その教訓から戦後に少しずつ前進してきた自由貿易を柱とする国際秩序を壊してはならない。
などとおっしゃる。
当時の経済ブロック化の背景には、大不況があったことをお忘れのようだ。
そのトランプの強運も、流石に陰りが見え出した、ように見える。株価が下がっているのだ。原因は中国と角突き合わせていることである。
だがトランプは、そんなことは意に介さない。中国をやっつければすぐに回復する、いや、そうでなくてもそのうち回復する、と信じているからだ。
で、実際にそうなりそうな気配である。
アメリカ人の多くは、グローバリズムだろうが保護主義だろうが、自分さえ儲かればいいのだ。そのため、経済を盾にしてトランプを攻めるのは無理筋となりつつある。
現に、今度の中間選挙で民主党が勝利したら株がさらに下落する、との予測も流れている。
だいたい保護主義というが、何を保護するのか。
それは富裕層の利益である。
アダム・スミスも、政府は富裕層の利益を守るために存在する、と『国富論』で述べている。
では、グローバリズムはどうかというと、やはり同じである。
グローバリズムがごくごくごく一部への富の集中を加速させたことは、様々な研究から明らかになっている。
つまり、保護主義だろうがグローバリズムだろうが、そんなものは同じ穴の狢なのだ。金の行く先がちょいとずれるだけである。
かくして、ピケティが暴いたr>gに則り、格差はどんどん開いていく。
格差が開くと何が起こるか。
「バカが増える」ということが起こる。
それが資本主義の根本であるならば、マルクスが期待したような革命は来らず、バカのバカによるバカのための政治が蔓延する、という事態を招来する。
今後の経済の方向性を示す中国共産党の重要会議が近く開かれる。経済政策がテーマの中央委員会第4回全体会議(4中全会)である。対米関係が厳しいなか、どんな具体策を打ち出すのか。そのコミュニケに注目したい。
もはや、一党独裁エリート主義の中国共産党に期待するしかないのか。
なんともロクでもない、どこにも希望が見えない時代となりつつある。
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その芽は日経さんが蒔いたタネじゃないの?
障害が起きてから「芽を摘め」という、おかしな日経さんである。
日経さんの日本語は「春秋」などでもちょくちょくおかしいが、社説となるとまた一段味わい深いものが感じられる。
今回のトラブルで本当にまずいところは、障害が起きることを前提としていなかったことだ。「ちゃんと考えてたよ」と言い立てるかもしれないが、「考えていたこと」が機能しなかったということはやはり、「本当に起きる」と考えようとしていなかったから、ということだろう。
残り3つある回線に振り替えられる仕組みがあったはずなのに、実際はうまく機能せず、注文を東証に出せない証券会社が続出した。
なんでうまく機能しなかったかというと、一番「経済的」な方法を選んだからである。俗っぽく言えば、一番「安っぽい」のを選んだのだ。
起きた時の損害を考えれば、もっとしっかりやっとくべきだったが、「どうせそんなことしょっちゅう起きないから」という「経済的」な思考が優先されたのだ。
バックアップ手段があったのに注文を出せなかった証券会社と、影響を回避した証券会社で差も出た。
別にこうしたことは私一人が憂えていたことではなくて、ちょっと気の利いた証券会社なら「東証のシステムはちょっとなあ」と心配していた訳である。
ともあれ、この障害をもたらした「経済的」な思考法を普段振り回しているのが、日経さんご自身であることを忘れないでもらいたいものだ。
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謝罪なき対話での解決は難しい
相変わらず沖縄には居丈高な日経さんである。
国は自らの主張がなぜ県民の理解を得られなかったのかをよく考え、新知事と真摯に対話すべきだ。
対話?
政府が今まで沖縄にやらかしてきたことを考えれば、ここは「謝罪」するのが人の道というものだろう。
謝るようなことは「記憶にない」、とあべぴょんは惚けるかもしれないが、
かつて自民党に属していた翁長前知事は、日米安保体制にも在日米軍の駐留にも賛成していた。掲げていたのは「沖縄の過重な負担の解消」だった。
にもかかわらず、安倍政権は翁長氏を反米主義者のように扱い、対決姿勢で臨んだ。振興予算を削るなど“兵糧攻め"のようなこともした。
日経さんですら一応は把握している。
まずは内閣閣僚が総出で沖縄中を土下座行脚する、くらいのことをしてからようやく「対話」とやらが始まるのではないか。
しかし、現状への意識が激甘なのは、あべぴょんだけでなく日経さんもである。
そのための糸口はどうつくればよいのか。佐喜真淳氏を擁立した自民党はバラ色の公約をばらまいた。学校の給食費の無償化もそうだし、米軍に有利とされる日米地位協定の改定を佐喜真陣営が要望したときも否定しなかった。
それらを玉城県政でも進めればよい。安倍政権が姿勢を改めたとわかれば、県民の世論も変化しよう。
自動車で人をはねても、保険金がおりればそれでいいだろ、くらいの対応である。
辺野古沿岸の埋め立て許可を巡る裁判が近く始まる。「法的に勝てば埋め立て開始」よりも、「まず対話」が解決につながる。
日経さんのいう解決がどんなものか知らないが、「謝罪」がなければ「対話」なんぞ解決にならない、ということをまず踏まえておくべきだろう。