小泉純一郎を警戒せよ

 一応新聞は朝日をとってはいるが、天声人語は読んだり読まなかったりしている。だが、今朝の天声人語は短い言葉で鋭い問題を提起していたように思う。

 その部分を一部引用してみよう。

 

>▼野田氏の念頭に小泉元首相の郵政解散があったかどうか。惨敗と圧勝とで結果は正反対だが、どちらも党内を敵に回しての立ち回りだった。その小泉氏が安倍 首相に向かって「権力を使え」と説く。おとといの日本記者クラブでの会見である▼いわく首相の権力は絶大だ。首相が決めれば反対派は黙る。その力を使って 下さいと国民も期待している。こんなに運のいい首相はいない。さあ原発ゼロを決断せよ、と。権力という剥(む)き出しの言葉がこれほど連呼される会見も珍 しい▼国民に由来する力とはいえ権力には魔性が潜む。その際どさを自覚しつつ善用するなら歓迎しよう。

 

 今の日本で「権力」の臭いが一番ぷんぷんするのが小泉純一郎という男だ。あのパフォーマンスを見るだけで鼻が曲がりそうになるが、人によっては香しいものに感じるのだろう。お好きな人にはたまらない、というやつだ。

 ここでポイントになるのは、小泉は野党の結集を呼びかけるようなことをせず、あくまで自民党に、総理大臣安倍晋三脱原発を説いていることだ。

 自民党のこれまでの歴史、原発利権との絡みを考えれば一見ピエロのようだが、この小泉という男は最初は一見ピエロのようでありながら、人々を巻き込んで大きな流れを作る、ハメルンの笛吹きのようなところがある。それについては郵政改革選挙のときに思い知ったはずだが、野党もマスコミも忘れてしまったかのように、小泉のパフォーマンスに酔っている。

 

 では、もし、あべぴょん脱原発へ舵を切ったなら、どういうことが起こるだろうか。原発ムラが悲鳴をあげるだろうが、それだけではすまず、菅直人を引きずり降ろしたように「アベ降ろし」を仕掛けてくるだろう。

 そこですかさず衆議院を解散し、「脱原発」を掲げてあべぴょん郵政選挙の再現をしたならどうなるか。

 おそらく、議会はあべぴょんシンパの議員で埋め尽くされてしまうことは想像に難くない。

 そうなったなら、脱原発を唱えつつ、憲法の改変をしかけてくるだろう。そしてそれは、現状よりずっとたやすく行われてしまうに違いない。

 それだけでなく、あべぴょんが常日頃「妄想」する古き良き日本をトリモロス改革も、次々に行われてしまうだろう。

 このような「エサ」で、小泉があべぴょんを釣ったらなら、急激な方向転換もありえないことではない。

 しかもこの場合、郵政改革がそうだったように、脱原発は中途半端なままにされてしまうだろう。これが最悪なパターンだ。

 

 「総理が停めろと言えば原発は停まる」ということを知らしめたのは、菅直人の唯一と言ってもいい功績だ。

 小泉はそれを逆手に取る戦略を持ち出してきた、と思う。

 この男にだけは、油断は禁物だ。小泉を毒蛇だとするなら、山本ナントカなんぞはハムスターくらいのものだ。

 

 ま、年寄りの杞憂で終ることを願う。

 

 

小泉純一郎―血脈の王朝

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