「日本のベートーベン」とやらの話

 日本のベートーベンとか呼ばれた人が、自分で作曲してなかったとか、本当は耳が聞こえたとか、そんな騒ぎになっているようだ。

 私は騒ぎになってからこの人のことを知ったので、曲がどのようなものかわからないし、今さら聞いてもしかたない。しかし、「全聾の作曲家の渾身の交響曲」という能書きがくっついていたなら、ついつい感動することもあったかも知れない。

 ただ、私は「感動」という情動そのものに対して懐疑的なので、自分が感動したからといってそれを大事にする習慣を持たない。毎日ノーノ『力と光の波のように』を聞いている変態(妻の評価である)にとって、感動を共有することは奇跡に近いものと諦めてもいる。

 

ノーノ:力と光の波のように

ノーノ:力と光の波のように

 

 

 ただ、この騒動を聞いてふと思い出したことが一つある。

 それは北大路魯山人荒川豊蔵の関係だ。

 魯山人の作陶は今も名高く、数多の仕事の中でも群を抜いて人気がある。

 しかし、現在魯山人作とされる陶器のうち、完全に魯山人の手によるものは少ないとされる。(ゼロだ、と断じる人もいる)

 その多くは魯山人が指導して荒川豊蔵に作らせたものだという。

 また、豊蔵以外にも陶工がいたともいう。

 作陶を始めた時、魯山人はろくろを挽くこともできなかった、という話もある。

 

 別段日本のベートーベンとやらを弁護する意図はない。

 その曲に「感動」してしまった人がいたとしても、芸術とはそうしたことが多いのだ、と慰めてあげたいだけだ。

 

 

糸

 

  ところで、試みにアマゾンで検索したら引っかかってきたのだが、上掲のCDの「新垣隆」とは、渦中の人のそれなのだろうか。

 他の参加者に高橋悠治大友良英(ドラマ『あまちゃん』のテーマを作った人だろう)の名前が見られるが、その筋では有名だったのだろうか。

 現代音楽(と一般に呼ばれる分野)は好きでよく聞いているが、さっぱり記憶に残ってなかった。