プレイとしての日米関係

 アメリカ大使館のフェイスブックが荒らされている。

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 こういう下品なことをするのはどういう類いの連中なのか、というのはちょっとネットをさぐってみればすぐ行き当たる。大使館の皆さんも同様だろう。

 しかし、ほんの少し前まで彼らはアメリカを絶対の正義のように擁護し、たとえ米兵がレイプ事件を起こそうと、被害者側を責めるようなことすらしてきたはずだ。

 アメリカに対する絶対服従が基本であった彼らが、なぜ今になって飼い主の手に噛み付いたのか?

 

 それはアメリカが「安定」を口にし、「正しい」ことを主張したからだろう。

 彼ら、というかそれだけでなく、通常「保守」と呼ばれる日本人が過剰なまでにアメリカに従ったのは、アメリカが「強く」て「大きい」からだ。「正しい」からではない。むしろ、間違ったことを無理強いした方がアメリカによく従った。

 力の強いものに過剰に隷従してみせることで、日本が単純な「弱肉強食」の論理に従っていることを、全身全霊で体現していたのだ。

 それは、戦前にアジア諸国を力で蹂躙したことに対する、自分なりの態度の表明になっていた。つまり、自分がアメリカの強大な力の前に諾々と隷従しているのだから、戦前にアジア諸国を力で侵略したことは罪ではない、ということである。

 実際にそんなメッセージが具体化されたことはないが、通常「保守」と呼ばれる日本人たちにとって、戦前の侵略を肯定するからにはアメリカの「力」に隷従することが当然になっていた。

 アメリカに従えば従うほど、戦前の行為が正当化される、と思っていたわけだ。

 ただし、まったく手前勝手に。

 

 それが今回は違っていた。

 アメリカは権柄づくに怒鳴りつけることなく、日本を諄々と諭そうとした。

 アジアの安定のため、米軍の力をこれ見よがしに誇示することもなく、理性的に振る舞おうとした。

 そして、どんなにアメリカにはいつくばろうと、戦前の行いは正当化されるものではない、ということを明示した。

 これは、通常「保守」と呼ばれる日本人たちが求めているアメリカではなかった。

 彼らがアメリカに求めるのは、理屈抜きで上から怒鳴りつけることであり、全て力において絶対に服従させることだった。

 今回のアメリカの態度は、SMプレイでSのほうが「こんなプレイは飽きた」と言い出したようなものか。下世話なたとえだが、他にピッタリくるのが思い浮かばない。

 

 そんなわけで、通常「保守」と呼ばれるマゾヒストの日本人たちは、あれほど大切にしていた日米関係がぎくしゃくしようとも、まったく非難がましいことを口にしなくなってしまったのだ。(民主党政権時代のアレは何だったんだ?)

 それは決して、旧サヨクのようにアメリカからの自立を意図したものではない。

 むしろ、なにかもっと別の、隷属すべき「力」を求めるあがきなのだ。

 

 

マゾッホとサド (晶文社クラシックス)

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