TPPという名の反グローバリズム

 以前から奇妙に思っているのだが、所謂グローバリゼーションというものを評論家センセイが口にするとき、それは経済のみを指しているようだ。

 彼らが政治について語るとき、おおむねその国境の壁を高くすることばかりを言う。

 グローバリズムを推奨する大勢の人たちは、ヨーロッパの経済危機に際して、EUの崩壊を望ましいこととしていた。また、彼らは国連についても、ことあるごとに「役立たず」と呼んではばからない。

 グローバリズムの逆は経済的な保護主義とされているが、政治的には互いの主権を融通し合う国際共同体を指向することこそ、真の逆方向となってしまっている。

 

 経済におけるグローバリズムが、なぜ政治的には「保護主義」のようになってしまうのか。もしTPPが将来において「太平洋共同体」を構築する橋頭堡となるのであれば、私は決して反対しない。むしろ積極的に賛成するだろう。しかし、そのような話はまったく聞こえてこない。

 

 グローバリズムというのは、その呼び名と裏腹に、「国家」というものの存在を強化させるための手段になっている。

 その詐術が改まらないうちは、グローバリズムに反対し続けていきたい。

 

 

新・反グローバリズム――金融資本主義を超えて (岩波現代文庫)

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