そして私は日経新聞をとるのをやめたのだった

 かつて「いざなみ景気」と呼ばれるものがあった。

 2002年から2008年まで続き、戦後最長の景気拡大と喧伝された。

 その成長ぶりは日経新聞が伝えるところによると、

 

・毎年GDPが成長した

日経平均もぐんぐんあがった。18000近くになった。「2万を越える」という声も多かった。

・人口はかろうじて増えていた。少子化は問題とされていたが、危機感は薄かった。

失業率は毎年下がった

・インフレ率は低いながら徐々に上がっていた。

・短期・長期ともに金利は若干上がった。

 

 日経新聞は「景気は順調に拡大」と煽り、評論家は不満を漏らす人間を「時流に乗ろうとしない怠け者」扱いした。

 しかし、こうした報道は、私が直に眼にし、耳に入れた情報とは、まったく食い違っていた。

 日経新聞は、まるでどこか別の国の新聞になってしまったように思えた。

 なんだかバカバカしくなり、思い切って日経新聞を断ることにした。学生時代からだから、短期の中断をはさみつつも、かれこれ20年とっていたのだが。

 

 現在、「いざなみ景気」は「失われた20年」というやつに含まれてしまっている。巷間すでにして口の端にすらのぼることなく、なかったことになっている。

 あの時の景気拡大報道はなんだったのか。

 おかげで私は、今も経済の諸々の指標について、素直に受け入れることができなくなってしまった。

 

 

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