ガイアツってなんだ

　TPPについて、賛成派も反対派も「アメリカから日本の参加を求められている」という認識は共通していると思う。

　アメリカからのガイアツというわけだ。

　が、しかし、アメリカはTPPについてさして重要視しておらず、日本の参加もそれほど切実に求めてはいない。むしろ遅延の原因になってるので迷惑に思ってるくらいだ。

　以前ちらっと書いたが、外務省が成立に向けて今イチ熱心でないのはそのせいだろう。TPPにご執心なのは、経団連の他に朝日日経読売毎日の面々である。マスメディアはTPPについて「アメリカのガイアツ」の強風を煽り立てており、そのため日本国内にもそれを信じる人間は多いが、実際そのような風はそよとも吹いていないのだ。

　さて、ちょっと評判になってるらしい下記記事を読んだ。

朝日「誤報」で日本が「誤解」されたという誤解 | 冷泉彰彦 | コラム＆ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

　とりたてて言うべきことがあるわけではないが、最後に

>「いつかは強い外圧が来て何とかしてくれるだろう」という見通しがあるように感じられます。これも誤解だと思います。

　という記述があった。

　いやあ、ガイアツってもジャパンバッシングみたいなのばかりじゃないから。最初に書いたように、勝手に日本だけで騒ぐのもあるし。というか、最近はそういう方が多いようだし。誤解も何も「チャンスがあればそうやって煽りたい」願望なのではないのか。

　そしてその分析として、こちらのエントリー。

この指摘は結構正しいと思う - 誰かの妄想・はてな版

>“海外から誤解されている”と誤解している日本人の目を覚ますのは、結局日本人自身の手によらねばならないという覚悟が必要でしょう。

　まったくもってその通りなのだが、私はひねくれものなので別な「覚悟」をしてしまう。

　ちょっと前にこれは右派のバブルではないか、と書いた。

　バブルというものがどのように弾けるかというと、おおよそはバブルそのものに弾ける原因があるわけで、ガイアツなどの外的要因で弾けることはまずない。

　調子に乗って暴れ回る子供が、自分で自分の足を踏んでころぶようなものだ。それで子供がおとなしくなるかというと、かえって泣き喚いて手が付けられなくなる。泣きやんだ後も反省などしない。誰かのせいだとぶつぶつ言い続ける。レトリックに拘泥してしまったが、右傾化ではなく幼稚化している右派の現状では、同様になる可能性はかなり高いと思う。

　日本人は海外の事情についてあまり気にしないくせに、自分のことは過剰に「気にされている」と思いたがる。そのみっともなさに気づいた時、冷静でいられるかどうか。さて……

黒船の世紀―ガイアツと日米未来戦記 (日本の近代 猪瀬直樹著作集)