産経の「噂」の真相?

某月某日 新聞やテレビが大々的に報じた通り、東京地検特捜部は本誌に対して名誉毀損による公訴を提起してきた。既に本誌5月号の特集記事でこれまでの経過は報告してきたが、裁判所は和久峻三西川りゅうじんの両案件を一本化して「合議体での審理裁判」するのだという。

 

 以上は、『噂の真相』編集長日誌をまとめたものからの抜き書きである。掲載されたのは1995年8月号、世間はまだオウム事件でゆらいでいた。

  『噂の真相』にとって、名誉毀損による民事の提訴は年中行事だったが、この件で初めて刑事告訴を受けることとなる。

「噂の真相」編集長日誌〈4〉

「噂の真相」編集長日誌〈4〉

 

  『噂の真相』という雑誌についてよく憶えている人は、もう40代以上だろう。一時期、月刊の論壇誌としては文藝春秋の次くらいに売れていた。持っている「臭い」としては、団塊のエキスをしぼってグツグツ煮詰めた、といった感じか。傾向としては反権力・反権威を標榜し、いわゆる左翼に親和性があったが、本田勝一革マルとも喧嘩していた。

 とにかく、ほとんど裏を取らない噂話を「こんな噂がある」としてどんどん載せてしまう、「火の無いところに水煙」のような雑誌だった。だが困ったことに、その「噂」が時に真実を射抜くことがあり、その打率は東スポよりかはずっと上だった。

 そして、掲載された「噂」に本気で怒る人間がいると、「こういう噂がある、と書いて何が悪いのか」と開き直るのだった。

 そう、今回の産経と韓国政府のごたごたを耳にした時、まずこの雑誌こと思い出した。

 

 真実をスクープするためには、誤報に気をつけてもそれを恐れてはならない。向こう傷は報道に携わるものなら当然、と覚悟すべきだ。

 しかし、へっぴり腰で「噂」をまき散らすのはどうか。相手がそれに対して憤慨すると、へらへら笑ってごまかそうとする態度でだ。

 『噂の真相』は徒手空拳だったが、産経はつねに自民党とそれに連なる右派勢力にぴったり寄り添っている。それゆえ私は、産経を「報道機関」とは認めていない。聖教新聞と同様なものと考えている。

 

 だが、しかし、それでも「産経の報道する自由を認めてやらなくてはならない」

 ただし、この文言の前後に(大きくため息をつきながら)とト書きをつけて、だが。

 

  ちなみに、刑事告訴を受けた『噂の真相』は、それに対抗告訴の手続きをとった。

 さらに公訴してきた宗像紀夫前特捜部長について、「パチンコ業者や「乗っ取り屋」と評判の人物たちと一緒にベトナム旅行を敢行し、しかも旅行費用や接待費用もパチンコ機器卸会社の社長が払っていた」というスクープを打ったのだった。(この件は国会でも取り上げられた)

 検察側はこのスクープを取り上げることをせず、宗像氏にそのまま裁判を継続させた。宗像氏は最近、袴田事件再審について「違法捜査ありきの再審決定」と異を唱えている。