つまり「トリクルダウンなんか死んでもするもんか」と
どのように『有効活用」するのかと思ったら、以下のごとしである。
勝ち残りを目指し投資を一段と拡大する
増配や自社株買いなどの株主配分
コスト削減を急ぐ
株主への利益配分を増やす
好業績の企業は投資の拡大に動く
そして、日本企業については、
総じて好業績が見込まれる日本企業は、利益や手元資金の活用策が注目されている。増配などによって株主を満足させることも必要だ。しかし、投資を怠れば競争力はいずれ衰えてしまう。日本の大企業もそうした危機意識を持ち続ける必要がある。
「賃金のアップ」などは、まったく関心がないようだ。
それだけでなく、社会への還元ということにも、一行も触れられていない。
「競争」というものは、お互いを貧しくするためのものだったか。そんな疑念が浮かぶ。
一つ、昔話をしよう。
まだIBMがコンピュータの代名詞だった頃のことだ。
ある年、日本の子会社である日本IBMが大きな利益を上げた。
すると、米本社から指令が来た。
「利益の一部を社会に還元せよ」云々と。
日本側はそれに反発した。この利益を上げるために、社員たちがどれだけの汗を流したことか。これはこれからの社の発展にこそ資するべきものである、云々。
しかし、日本IBMが強く抵抗しても、米IBMはゆずることなく同じことをくりかえしてきた。
当時のアメリカはまだファクスが一般的ではなく、テレックスでのやりとりだったという。
何度も言葉を交わすうち、お互いがヒートアップし、だんだん表現がきつくなってくる。
日本側がやや切れ気味に短い電文を送った。
「そんなことをすれば、金をどぶに捨てることになる」
米側の返事はもっと短かった。
「いいから、どぶに捨てろ」
企業は社会の発展のために存在する、という「企業倫理」がまだ当時のアメリカには生き残っていた。
むしろ、エコノミック・アニマル(死語)だった日本の方が、現在の企業のあり方に近かったと言えるかもしれない。
- 作者: ルイス・V・ガースナー,山岡洋一,高遠裕子
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