デフレは物価が安くなるだけではなく安物が増えることでもある
クラウドソーシングというのが広まっていることは聞いていた。
それによって、ちょっとした挨拶文を格安で書いてもらったり、チラシを安くデザインしてもらったりしているという。中には会社のロゴマークを作らせた例もあるとか。
バブルの頃、デザイナーとやらにとんでもない料金をふっかけられたことがある身としては、良い時代になったと思わなくもない。
ただ少し気になるのは、そうした「安い」金で作らせたものは、所詮「安物」でしかない、ということだ。
デフレというのは、モノ自体が安くなるだけではなく、安物がはびこることでもある。どちらでも統計では「デフレ」がはじき出されるので、そうしたことは肌感覚で判断するしかない。
かくして「安物」がいったん定着すると、今度はそれがなかなか退場してくれない。インフレになっても「安物」の値段が上がるだけで、品質の良いものがそれに取って代わることはない。
こうしたことは統計の数字とにらめっこしていてもなかなかわからないものだ。
クラウドソーシングは働き方の選択肢を広げる意義がある。新しい働き方を安心して選べるよう、労働者保護に力を尽くしたい。
「新しい働き方」などといいつつ、人件費のコストを下げることばかり考えるなら、世の中には安物ばかりがあふれかえっていくだろう。
受注する人は発注元に雇用されているわけではないため、最低賃金法は適用されない。
日経さんの社説はもっともらしいことを言ってはいるが、生かさぬよう殺さぬよう、というところに落ち着くだろう。
結局は「内職」がちょっと高度になって復活するだけのことである。
「内職」によって作られた「文章」や「デザイン」は、それによって食べている「プロ」を駆逐し、日本の文化をソフトに殺していくだろう。
そして、殺されたものはもう二度と蘇らないのだ。