共同体は改めて想像されるか

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 タイのプミポン国王が亡くなった。

 あまりにも国王に頼りすぎている現状について、「現国王が亡くなったらどうするのか」という懸念は昔からあった。私が直に知る中では、23年前にタイに行った際すでに囁かれていた(王子のこともその時聞いた)。その「リスク」について、この期に及んで有効な対応がなされてないように見えるのは、「不敬罪」のために議論が深まらなかったためか。

 

 プミポン国王が有能であったことは疑いない。国民からのあまりの讃仰ぶりに隠されている部分もあるだろうが、タイにも存在する民主運動家ですら国王の能力は認めており、「王の在位中に大きな進展は見込めない」と嘆いているほどだった。

 タイの民主運動の原点は、タノム軍事政権によるタマサート大学での虐殺にあると言えるだろう。

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 そしてタマサート大学の学生たちが主導したゼネストにより、タノムは亡命して軍事政権は崩壊した。

 その当時を記憶する「火炎樹の息子たち」(タマサート大学に植えられた多くの火炎樹に由来する。本当は鳳凰木らしいが)は、まだ存命のものも多い。

 なお、王女の名を冠したシリントーン国際工科大学もタマサート大学の敷地内にあり、同大学の理系学部をリードしている。

 

 あまりに強すぎるカリスマの持ち主が亡くなり、これからタイにどのような変化が起きるかは未知数である。良い方に転がってくれることを祈るばかりだ。

 こんな時に、ベネディクト・アンダーソンが生きていてくれたら、と考えても仕方のないことを考えてしまう。

 

ヤシガラ椀の外へ

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比較の亡霊―ナショナリズム・東南アジア・世界

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定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行 (社会科学の冒険 2-4)

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