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必要とされるのは本当に本物の労働組合だ

 「労働組合」と聞くと思い出すエピソードが二つある。

 まず、手塚治虫のこと。虫プロにも労働組合を作ろう、ということになった時、社長である手塚治虫が「ぼくも入れてくれ」と言ったそうな。なぜなら、自分が一番「労働」しているから。

 もう一つは、セゾンの堤清二(作家の辻井喬)の話。まだ西武デパートが「ゲタばきデパート」と呼ばれていた頃、社長になった堤清二は社内に組合がないのを知って、社員に労働組合を作るように提案した。ちなみに、堤清二は元共産党員でもある。

 なんとか作ったはいいが、今度は集まりが悪い。なんでも、田舎から来ている従業員などは、故郷の両親が「クミアイなんぞに入ってくれるな」と言うので渋っている、と言うことだった。仕方なく社長自ら「組合」の意義について従業員に説明し、やっと形になったとのこと。

 

 日本の労働組合は、ごく一部を除いて、本来のあり方を失っている。

 組織はほとんど企業の一部となっており、組合長を務めるものは次期役員であったりもする。

 原因は、欧米の労組が業種別に組織されているのに対し、日本のそれは企業別になっているということにある。

 

 しかし、そうして形成されたムラ的家族的な一体感は、高度成長期からバブルにかけては良い方に効果が現れていた。欧米のように強すぎる労組が企業経営を阻害しないので、日本は急速な経済成長を遂げることができた、というのは保守的な評論家の決まり文句でもあった。(竹村健一とか、長谷川慶太郎とか)

 だが、今はそれが仇となっている。

 

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 本来賃金アップは、政府はもちろん企業経営者の義務でもなく、労働者の権利である。その権利をきちんと遂行できないがために、社会全体がデフレに沈む事態となっている。

 

 ところが日経さんはそのことから目を背け、労働組合が労働の流動性に資することを提案している。

 

日本も賃金を上げていくうえで職業訓練の重要性は変わらない。とりわけ非正規社員の場合は教育訓練の機会を広げる必要がある。連合は例えば都道府県ごとの地方組織を通じ、訓練を充実させる活動に取り組んではどうだろう。

 

 現状の日本でそんなことをしても、なんの役にも立たないどころか、状況を悪化させることになるだろう。

 例えば、昨今問題となっている過労死について、労組が機能していないことと同根の病と思われるが、日経さんは知らぬふり気づかぬふりである。

 

 結局「人命」という資源を消耗することでしか、日本という国を支えることはできない、というのがこの国の上つ方の面々が有する認識なのだろう。

 人口が減るわけだ。