そしてすべてがFakeになる

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 ご隠居さんのお小言のような、取り立ててどうということのない日経さんの社説である。日経さんはまだこの「通貨」がどのような可能性を秘めているか、測りかねているのだろう。

 

 仮想通貨というシロモノについて、意外な人物が批判的だったりして笑ったのだが、出現を耳にした当初から「こういうのは散々否定されつつも、広まっていくだろうな」と、諦めに似た予感を抱いていた。

 だいたい21世紀になって、資本主義は巨大な「ごまかし」で動いていることが暴かれつつも、みんな何となくそれを受け入れてしまっている、というのが現状なのだ。

 パナマなどのタックス・ヘイヴンなんかが代表的だが、イギリスのLIBOR操作やら、ギリシア危機やら、結局タネが丸見えの手品でもそれはそれ良し、ということになってしまっている。

 そんな状況下で仮想通貨のみを叩こうってねえ、「罪なき者のみ石を持て」とでもつぶやきたくなるってもんだ。

 

 仮想通貨はやがて「仮想」ではなくなり、通貨として流通するだろう。

 通貨発行の自由化という、ハイエクの夢が実現するわけだ。

 そこでちょっと思いつくのは、国債の問題がこれで解決しないだろうか、ということだ。

 国債保有している会社、組織、さらには個人も、国債を根拠にして仮想通貨を発行できるようにしてしまうのだ。

 その時通貨の根拠となった国債は、自動的に無期限・無利子となる。そうすれば日銀が買い取らずとも国債をどんどん発行できるし、仮想通貨を発行する側もスパコン並べてマイニングなどしなくても済む。

 かなり大雑把な思いつきだが、似たようなことは財務省や日銀でごちゃごちゃ考えているやつはいるだろう。

 そして「仮想」は仮想でなくなり、あらゆる価値が転倒される。「良いは悪い、悪いは良い」てなもんだ。

 

 念のため断っておくと、私自身は仮想通貨なるものを一つも手にしていないし、『すべてがFになる』という小説も読んだことがない。

 

 

すべてがFになる (講談社文庫)

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