「国」で選ばられるもんかね

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 もはや落日の経済大国、かつての黄金の国ジパングは幻となった、というのが「外国」での評判である。

 欧米のニュースでも日本の経済的な動きが大きく取り上げられることは少なく、たまに記事が出れば、19世紀のクローニー・キャピタリズムを引きずりつつ、その場その場で嘘をつく政権の腐敗ぶりと、それを支持してやまない日本人たちの愚かっぷりである。

 ネット環境はすでに諸外国にあまねく広がっており、その国で働こうとするなら、まずちょいとネットカフェあたりで情報収集くらいはするだろう。

 労働環境について検索すれば、たちまちkaroshiという単語に行き当たり、それに対して政府がまったく冷淡な態度を取っていることもわかる。

 「技能研修」と名付けられたものが、ほぼ奴隷労働と変わらないことも知れるはずだ。

 だが、それでもやってくる人間はいるだろう。

 

 ちょっと考えてみてほしい。日本人が海外で働くとき、欧米以外を選ぶ場合、「国」ではなく「仕事」すなわち「賃金」で選んでいるはずだ。

 「国」よりも労働条件が優先して考えられるのであり、「国」といういわゆる「ブランド」がそれを覆い隠すのは、その国が憧れの対象となっている場合だけである。

 「日本」は果たして憧れの対象となっているだろうか。

 マンガやアニメの評判は聞くが、それは「日本」とイコールではないし、それらに憧れてくる人たちは、政府が期待するような労働に従事してくれはしないだろう。

 

 日経さんが社説で言い垂れる「選ばれる国」という言葉には、「日本」というブランドに憧れてくる人に、低賃金過酷労働に就労していただこう、という下劣な欲望が隠されている。

 しかし、「日本」そのものに、もはや日経さんが期待するようなブランドイメージはない。

 ここで本来なら餌で釣るほかないが、政府と日経さんはその餌もつけずに「釣り」をしようとおっしゃる。

 

 日本の企業が雇った外国人が母国にいる家族を健康保険の被扶養者にし、家族が母国でつかった医療費を日本の企業健保などに請求する悪質事例も増えている。

 

 この制度は麻生内閣で垂らされた「餌」だが、それを日経さんは

 

こうした制度の穴をふさぐ手立ても早急に講じる必要がある。 

 

 などといって「餌」を外せとおっしゃる。これで永住権も与えず、家族の帯同も認めない、移民のように見えるけど移民じゃない、低賃金で過酷な職場で働く都合のいい労働力を釣ることができるのかどうか。

 だがしかし、それでも釣られる魚はいるわけで、それがどんな魚かといえば、それはもう、騙された魚である。

 前半部で述べた「それでもやってくる人」とはそういう人たちだ。

 その人がずっと騙されたままということはなく、実際に働き出せばすぐ自分が騙されたと気づくだろう。

 騙された人たちが故郷に帰れば、黙って騙されたままにはならないから、他の人々に自分の体験を話す。

 するとそれによって、「日本」のイメージはさらに悪くなる。

 こうした負のスパイラルはとっくに起こっていることかもしれないが、今度の「骨太」の方針とやらで、それがさらに拡大されることは確実だ。

 

 日本政府が少子化対策にさっぱり本気にならないのは、将来本格的に移民を入れれば解決する問題だとして、のほほんと構えているからだ。

 その時、果たして移民から「選ばれる国」になっているだろうか。