持続されたりしたら嫌な「目標」

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 日経さん定番の一次産業叩きである。

 「持続可能な開発目標(SDGs)」ということだが、安倍水害のあとで農業にそれを求めるのは間が悪いと考えたのだろう、主な焦点は漁業に絞られている。

 ニホンウナギの件もあるし、確かに漁業については長期的視野が必要である。

 では、それをなすにはどのような方策が必要か、といえば、やはり日経さんが大大大大嫌いな「補助金」で漁業を助けるしかないだろう。

 「企業は努力してる。補助金漬けの農漁業は努力していない」というのが年来の日経さんの主張であるが、その企業とやらの「努力」は金融緩和という「ベビーウォーカー」によって支えられたもので、とてもじゃないが自分の「あんよ」で「お上手」できたものとは言い難い。

 

 企業も調達先の農漁業者に意識改革を促していくべきだ。三菱商事が14年に買収したノルウェーの養殖大手セルマックは、SDGsの評価機関から海の豊かさを守るモデル企業に選定されている。こうした企業のノウハウを国内産地に広める工夫も求められる。 

 

 日経さんは日本の農漁業を「企業化」したいわけで、最後にこうした成功例を持ち出してそれを促している。

 三菱のセルマックの事例は、つい先年まで赤字を垂れ流しており、別々に買収していたチリの養殖事業と合わせてようやく黒字転換にこぎつけたに過ぎない。

 界隈では成功例として持ち上げる風があるが、ロシア情勢によってはどう転ぶかわからないし、ちょっと気になる話も流れている。

 それから、丸紅が穀物メジャーであるガビロンを買収し、泥沼に足を突っ込んだ状態になってるわけだが、そっちの方は無視なのか。

 丸紅分裂の危機(何度目だ、とは思うが)などと囁かれているが、日経さんは読者がとんでもない「情弱」だとなめているのか。

 

 人権問題を重視する国連は、SDGsでもさまざまな課題を設けている。外国人労働者が増える日本の農漁業でも、人権への配慮は大きな課題だ。

 外国人労働者への賃金不払いや過重労働などの不当な扱いは、移住労働者の権利保護、格差是正など、SDGsが定める複数の課題に逆行する人権侵害だ。

 

 そして、日経さんはこうした労働問題について、一次産業だけのものだとでも言いたいようだ。

 高プロ裁量労働に諸手を挙げて賛成しておいて、まったくどの口が申しますことやら。

 こうしたことは確かに問題ではあるが、「問題だ問題だ」と騒ぐだけなのは、もう一方で似たような「問題」を「目標」として掲げてしまっているからなのだろう。

 

 日経さんの掲げる「目標」は、さっぱり「持続可能」のように思われないし、下手に持続したらそこら中で不協和音が鳴り響くようなシロモノなのである。