足元なら固まりすぎているくらいだが

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 風説の流布になるかどうか微妙な話をすれば、旅ゆけば銀行はつぶれないそうだ。あれほどロクでもない実態が露わになり、しかも大赤字に陥ったにも関わらず。

 俄かに信じがたい話ではあるし、何やらきな臭くもあるが、ありえないことではない。

 これというのも、内部留保をたっっっぷり溜め込んでいたおかげである。

 

 日銀が政権にGDPのデータを出せと迫ったかと思えば、またもやマイナス成長という結果が出ているわけだが、「大小で言えば大の方」の企業たちはノンコのシャー(死語)としている。

 

とはいえ多くの企業で手元資金は潤沢だ。人手不足に対応した省力化や設備の高度化へ投資の手綱を緩める局面ではないはずだ。

 

 手綱が緩まることはないだろう。いざという時のために内部留保を溜め込み、投資家の皆様のご機嫌を取らねばならないからだ。

 そのための「投資」とは、「人手不足に対応した省力化や設備の高度化」という言葉で飾られた「人件費の節減」である。

 政府は「移民じゃない移民」によって、その流れを後押ししようとしている。

 こうして内部留保を膨らませておけば、いつ旅ゆけば銀行のようなことになっても生き残ることができる、というわけだ。

 実際、数多の「大の方」の企業では数字の改竄が露わとなった。昭和の頃ならつぶれかねない不祥事も見受けられた。が、潤沢な内部留保があれば、そうした「つまづき」も乗り越えることができるのだ。

 日経さんが心配なさらなくとも、「大の方」の企業の皆々様の足元は、がっちりがちがちに固められている。下手に身動きできないくらいに。

 

 過剰な内部留保と、企業が「つぶれない」ことを願う投資家の皆様により、現代社会では「倫理」というものの値打ちが暴落している。

 それは現政権が交代しないことを願うあまり、ロクでもないスキャンダルを「なかったこと」のようにしようとする流れに似ている。

 そして、そうしたモラル・ハザードを当然とする流れは、日経さんのレゾン・デートルである「経済成長」を、必ずしも阻害するものではないだろう。

 だが、もちろん、その逆もまた然りである。

 

旅ゆけば物語 (ちくま文学の森)

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