まず「危機感」を捨てるべきだ

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 出生率低下とか、これがアベノミクスの成果などと程度の低い皮肉を言ってもしょうがないが、自民党政権なんだから当たり前だろう、というのが素直な感想である。

 

1974年に比べ、40年間で半減という落ち込みぶりだ。

 

 こういうのは、お若い方が書いているのか。

 当時を憶えている人なら、「人口爆発」という懸念があったことを言うだろう。とにかく人口問題といえば「増えすぎる」ことだった。念のためことわっておくが、中絶件数も当時は現在の倍以上あった。

 

 人口はどうやっても減らないもののように考えられていて、そのことが経済学に「うんざりな科学dismal science」という別称を与えていた。

 増え続ける人口をどうやって喰わせるか、というのが経済学の最終目的(テロス)である。そのため、人口が減ってきたらどうするかというのはあまり得意ではない。

 

若い世代の結婚や出産への希望がかなえば、合計特殊出生率は1.8に回復するとの推計もある。思い切った取り組みで、社会全体で子育てを支えたい。

 

 資源のないこの国において、人口だけが国力の源だった。

 「産めよ増やせよ」は、いくらでも使い捨てのきく人間を量産するための掛け声である。

 実際、特攻隊などはそうした考えがなければできるものではない。

 

 「愛国心」とは国のために命を捨てることだ、などと臆面もなく口にする政治家がふんぞり返っているうちは、出生率の増加など望めまい。

 人命を消耗することでしか国力が保てない、という発想から来る「危機感」とやらをまず捨てるべきだろう。

 それはもちろん、ブラック企業を消極的ながら擁護する日経さんにも言えることだ。

 

 

 

初版人口の原理 (1962年) (岩波文庫)

初版人口の原理 (1962年) (岩波文庫)