新型コロナと新自由主義(追記あり)

「やべえ、風邪みたい。インフルかも」

「コロナだといいね」

 この会話、別にブラック・ジョークの類ではない。コロナが新型にバージョンアップされる以前、インフルエンザはコロナなら症状は軽いし治りやすかったのだ。

 インフルエンザにしたって、フランスあたりじゃめったに検査しなかったし、それ以前に38度程度の熱だと医者は「いちいち来るな」という態度だった。「インフルエンザ?だからどうした」てなもんである。

 そして、現在の惨状がある。旧型コロナへの認識が、多少は拍車をかけたことはあっただろう。

 

 そんな昔を懐かしむのか、「コロナは風邪」という人達がいる。

 より病膏肓なものとして、「コロナはビル・ゲイツの陰謀」「コロナは5Gで広がる」などもあるが、それはおいておく。

 たしかに風邪は風邪である。だがただの風邪ではない。

 こうした認識の差異について、普段「科学的」を絶対のものとして信奉する方々は、まったく有効な発言ができない。たしかに風邪だからだ。

 そしてそれに続けて、少なからぬ人達が「だからコロナを恐れない」と言う。

 「コロナを恐れない」のはどういった人か。

 まず、テレビを気にしない。天気予報のように流される「今日の感染者数」について、明日の降水確率ほど気にしない。死者の数よりも、熱中症対策が大事だと考える。

 なぜなら、「自分の周囲にコロナで死んだ人がいないから」だ。

 そして、「死ぬのは高齢者や、持病持ちだから、かかったらあきらめればいい」と吐き捨てるように言う。

 私の周囲にもコロナで死んだ人間はいないが、上記のようなことを口にする人間は存在する。彼自身「高齢者」であり「持病持ち」である。そして、大手出版社を定年退職し、現在は趣味のヨットに興じるちょいワルグルメオヤジでもある。さらには、弱者への福祉を否定する新自由主義者だ。

 

 新自由主義者は、自分が弱者に転落するかもしれない、という想像力に欠けている。

 「コロナは風邪」という人達は、自分がコロナにかかるかもしれない、という想像力に欠けている。

 新自由主義者は弱者など切り捨てればいい、と考えている。

 コロナが後期高齢者や透析を受ける人達を減らしてくれるのなら、それは天の配剤だとも考えている。

 新自由主義者にとって、コロナは弱者の減少に拍車をかけてくれるものであり、自分の思想に合致した病いであるわけだ。

 ゆえに彼らは、コロナを恐れず株式投資に精を出す。GDPが何%下がろうが構わない。状況は自分達にとって「理想的」だからだ。昨今の株高はそうした理由なのだろう。

 アフターコロナがどうなるか知らないが、医療福祉の充実へ人々が関心を向ける、と簡単にはいかないと思われる。

 

 なお、私は酷く船酔いする性質なので、ヨット遊びはずっと断っている。

 

 

  文中、コロナや新自由主義者についての記述が雑なことをお詫びします。

 

(以下追記で蛇足)

 どうしようか迷ったが、ちょっとびっくりしたので追記。

 以下の『アデライドの花』というコミックスなんだが、伝染病が重要なシチュエーションになっている。病いは南国から来た高貴な花嫁によって持ち込まれたもので、お付きの医者たちは「ただの風邪みたいなものです」「心配いりません」と断言する。しかし、人々はばたばたと死んでゆく。医者たちも死ぬ。

 そして、重要な登場人物の女性の名前が「コロナ」である。

 しかもこれ、新型コロナ流行以前に描かれているのだ。

 

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  娘から教えられたのだが、さすがに驚かされた。

 可愛らしい絵柄の割に、ストーリーは酷く殺伐としており、エドワード・ゴーリーなどを好む人ならお気に召すかと思われる。

 

 

おぞましい二人

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