それを何とも思わず受け止められるのは


経済減速でも成長の歩み止めぬ世界企業 :日本経済新聞

 

 確かに、世の中が不況でも一部分は儲けていたりする。そういうのは、だいたい自分だけの「抜け道」を知っているのだ。ピケティの本にも取り上げられていた、バルザックの『ゴリオ爺さん』もそのような一人だ。小麦のルートをつかんでいたバーミセリ職人のゴリオは、革命の混乱に乗じて巨万の富をつかむ。(そして娘のために投げ捨ててしまう)

 しかし、ここで取り上げられているのは、市井の職人ではなく大企業ばかりだ。彼らが経済減速の影響も受けず、成長し続けられることに対し、「それが経済であり、資本主義というものだ」と納得するのは、どこかカルト宗教めいた臭いが漂う。

 後半では苦戦する企業についても触れられているが、

>米国の主要500社は7~9月期に収入が前年同期に比べて4%伸び、純利益は7%増えたもようだ。

 ということである。これを企業のみの努力に帰して、『ゴリオ爺さん』のヴォートランのごとく(これもピケティの本にVautrin's Lectureとして取り上げられていた)説教を垂れるなら、その性根はこの悪党と同じく、どこか信用のおけないものと言えるだろう。

 

 

ゴリオ爺さん (新潮文庫)

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