もしもの世界
場所は、そう、ゴールデン・トライアングルのあたりとしようか。
ある集団がそこを占領し、「国家」を僭称する。
財源はもちろんアヘンである。
国の名前は「サムライ国」
国家元首は「将軍」を名乗る。
国家を構成する成人男子はみな日本刀めいたものを腰に差し、自らを「サムライ」と呼ぶ。
「ブシドー」の精神に則った国づくりをすると宣言し、二言目には「ヤマトダマシイ」を言い立てる。
もちろん完全な男尊女卑である。近隣から女性を強奪し、1人で何人も「メカケ」を持ち、将軍は「大奥」をつくる。
近隣を襲撃した際、女と子ども以外はすべて殺す。殺害方法は日本刀による斬首である。「サムライ」たちは、どれだけたくさん首を切れるか競争する。それに参加しない臆病な「サムライ」は、「ハラキリ」させられることになっている。
「ソンノー」とわめいて、なぜか日本の皇室を尊崇する。
「ジョーイ」と騒いで、外国人は問答無用で殺戮する。
……などなど。
もしもこんな国が突如として現れたら、多くの日本人は戸惑うだろう。
「そんなものは本当の侍ではない」と言い立てるに違いない。
しかし、少なからぬ若者たちが海を渡り、この国に参加してしまうこととなり、頭を抱えることだろう。
今、イラクの一部を占拠する「あの連中」(国とは呼びたくないので、こう言っておく)に対し、多くのムスリムが抱く戸惑いと、アンビバレンツな状況はこのようなものではないか、と推測する。
まあしかし、つい70年前、日本は実際に「サムライ国」と同レベルだったわけだが。