鼓腹撃壌という反自由主義的なお話

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 また、どうでもいいような内容の社説である。

 このところ改憲の機運がしぼみがちなので、日経さんの憲法への物言いもまた、風のない日のこいのぼりのようにぐんなりしている。

 

 だいたい、日経さんが「鼓腹撃壌」の故事を持ち出すところからしておかしい。

 この四文字熟語の背景にあるのは、政治的思考を全てお上に与けてしまおうという、反民主主義的でありかつ反自由主義的な考えである。

 日経さんは資本主義の背景としてある自由主義を讃仰しているものと思っていたが、こちらの勘違いだったのだろうか?

 まさかと思うが、この稚拙なお話の中に、「小さな政府」の理想なんぞ見出していたりするのだろうか?

 

 今、鼓腹撃壌について「稚拙」と書いた。が、実際に稚拙なのだ。

 この話の元は『十八史略』だが、この本は中国で子供向けに書かれたわかりやすい歴史、という内容なのである。学研あたりの歴史マンガみたいなものだと思えばいい。

 それが江戸時代の日本に伝わった時、当時のインテリたちがまっとうな「歴史書」としてそれを扱い、そこに採用されている故事を深い意味のあるものとして、文化人たちが今に伝えてきたのだ。

 最近、百田とかいうのが「中国文化は日本に合わない。漢文の授業をなくせ」と騒いだそうだが、中国文化はかようにして日本の「伝統」と分かち難く存在するものなのだ。日経さん(と小渕恵三)が「鼓腹撃壌」と口にするくらいには。

 だいたい、江戸時代における本当の「文章」とは漢文であった。漢文の読み書きができないものは「文盲」とされたのである。

 そうした伝統をはっきり伝統として認められないから、百田のように中国コンプレックスが消えないのだ。

 

 

帝王学の源流―十八史略を読む

帝王学の源流―十八史略を読む

 

 

 私自身の憲法についての考えは、以前書いたので繰り返さない。

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で、日経さんはちゃんとやれてるの?

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 なんか知らん、またバイトにでも書かせたのか?と疑いたくなるような社説である。

 M&Aという行為そのものに「無理」があり、その「無理」を無理やり通して道理を引っ込めることができないのならば、最初からやらないほうが無難なのだ。

 それに重ねて日本のM&Aは、羽布団の催眠商法にでも引っかかったように高値づかみをするんだから始末に負えない。

 

 まあ、それはそれとして、日経さんは他人のことばかり言ってられるご身分じゃないでしょうに。

 自分が買収したフィナンシャル・タイムズはどうなってるのか。

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 赤字にこそなってないが、やはりのれん代が高すぎたんじゃないか、という懸念があるようだが。

 

 被買収企業の自主性を尊重する一方で、リスク管理や投資計画にはしっかりと目を光らせる体制が不可欠だ。相手企業に乗り込み、経営の陣頭指揮をとれるようなグローバル経営人材の育成も急務である。 

 

 他人に言うのは簡単だけど、自分の頭の上のハエはちゃんと追えているのかね?

 

 

 

なんのために独裁させてやってると思ってんだ

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 政権支持の理由はそれぞれにあるだろう。

 しかし、独裁を許すまでの支持ともなると、それなりの「思惑」が伴うものだ。

 今日の日経さんは、その「思惑」について吐露している。それは日経さんだけでなく、日本の経済をあれこれしたい上つ方の思惑を代弁したものでもある。

 

にもかかわらず安倍政権は改革に消極的にみえる。高齢有権者に不人気な改革は強い政権でこそなし得る。1強といわれる政権なのだから、特に歳出面を中心に社会保障改革に取り組んでほしい。 

 

 私には、そっち方面の「改革」についてなら、あべぴょん政権は十二分に積極的だと思われるのだが、日経さんとその背後の上つ方の人々にとってはまったく不十分であるらしい。

 

政権は消費税率の10%への引き上げを凍結した。であれば給付の野放図な膨張を抑える制度改革が不可欠である。

 

 では代わりに法人税増税しよう、という話には絶対にならない。「そんなことをすれば経済に打撃が」と喚く。消費税増税でもそれ以上の打撃があったと思うが、そういうのはなかったことになっているのだろう。

 

税財源で賄う生活保護世帯の医療費が野放図に増えないよう、規律を働かせる仕組みもいる。 

 

 貧乏人は病気にかかったらさっさと死ぬ、という「仕組み」が必要なようだ。

 

有権者におもねるのではなく、納得させる政権の力量が試されている。 

 

 そのためにまた「十分な」協議やら説明やらで、強引に押し切ってしまえ、というわけだ。

 上つ方があの恥知らずに独裁を認めているのは、このような「思惑」からきているのだろう。

 かくして、弱者切り捨てをスムーズに進めるために、王様と王妃気取りのバカップルが国中にネポティスムを蔓延らせるのを、黙って見ているというわけだ。

 もしかして、こないだ日経さんが「懲罰投票」とか喚いたのは、「さっさと福祉を切り捨てないと許さんぞ」というのを暗に示していたのかね?

 

 

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憲法9条がなくなったらやってみたいこと

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 また日経さんがどんくさい社説を書いている。

 トランプはその退屈きわまるくそったれな「現実」を叩きこわすことを期待されて当選したわけで、現状のあの男の振る舞いはまったく支持者たちの願望にかなったものだと言える。

 その証拠に、

 

ワシントン・ポスト世論調査によると、トランプ氏に投票した人の96%がなおトランプ氏支持だった。

 

 トランプに投票した人たちの支持はまったく揺らいでいない。

 やがてトランプの経済政策は支持者たちを痛めつけるだろうが、それでも多くの人たちがトランプ支持をやめないだろう。彼らの真の願いは、自分たちの生活レベルの向上ではなく、普段偉そうに賢しらなことを言い垂れているクレバーな連中に頭を抱えさせ、彼らに向かって鼻翼を親指で抑えつつ手のひらをパタパタさせてぶーすることだからだ。

 そして、その状況は呆れ返るほど日本と似通っている。

 

 国際関係における現状の混乱は、ほとんどがトランプの人間性に端を発しているが、それに比べて日本がまだ理性的な振る舞いができているのは現行憲法のおかげである。決してあべぴょんがトランプよりマシだからではない。あべぴょんとトランプは、知性はどうあれ、品性についてはほとんど同格だからだ。そのことは、シリアへのミサイル攻撃に、あべぴょんがいち早く賛意を示したことからうかがい知れる。

 おそらくあべぴょんはあの攻撃を見て「あんなこといいな、できたらいいな」と羨んだことだろう。

 憲法9条がなくなったら、ああやって気に入らない国にミサイルをしこたま叩き込んだり、自分のやりたいことが上手くいかない時には、てきとうな理由をつけて爆弾を雨あられと降らしたり、ということがしたいのだ。それには現在の解釈改憲による戦争法案ではまだ足らないのである。

 そういえば、「アメリカとの戦争に巻き込まれることはない」とか断言していたと思ったが、本人はとっくに忘れているんだろうな。

 

 

 

支持率支持率と気にしすぎるのはポピュリズムの罠ではないのか?

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 なんというか、「プーチンくんのおうちに行ってなかよく遊んだよ!」というだけだった。一生懸命成果があったように喧伝しているが、ゼロどころかマイナスに終わった、というのが実際のところだろう。

 

個人的な関係づくりという意味では十分なほど会談を重ねてきたが、日ロ間の信頼醸成になかなか結びつかないのはもどかしい。 

 

 「信頼」ねえ。何度会っておしゃべりをしようが、ウラジミールとファーストネームで呼ぼうが、そんなものはまったくの無駄だろう。保守系の評論家センセイ方がよくおっしゃっていたではないか。「リアルな国際外交において、信頼など糞の役にも立たぬ」と。「保守」のあべぴょんがプーチンとの「信頼」によって外交をなそうとしている、ということは、あべぴょんには持ち札が何もないと言ってるようなものだ。

 まあ、外交でかっこよく海外の首脳と会談する様子を見せ、国内の「支持率」を上げるのだけが目的なら、その点についてだけ「成果」はあったと言えるのかもしれないが。

 

 ところで、この「支持率」というやつ、あんまり気にするのはポピュリズムを亢進させるだけではないか、と最近考えるようになった。

 だいたい、以前はこんなに支持率が持ち上げられることは少なかったように思う。確かに話題にはなっていたが、全てに優先するような重要事項としてではなかった。

 あまりにも支持率支持率と気にしすぎるのは、ポピュリズムの罠にかかっているようなものではないか。

 あべぴょんも「ぼくちんの支持率は高い」と二言目には口にしているようだが、だからと言ってさっぱり下がらない支持率について苛立つようでは、あべぴょんの思惑にはまっているようなものだ。

 たとえ支持率が高くとも、ダメなものはダメ、悪いものは悪いと指弾できるようでなければ、社会にはどんどんポピュリズムの毒が回ってしまうだろう。

 支持率さえ高ければ何で許される、などというのは、それこそまさしくポピュリズムなのだから。

 

 これから先、あべぴょんの支持率狙いを批判することはあっても、自分自身はあまり支持率について気にしすぎないようにしていこうと思う。

 

 

 

座敷犬、主人に吠える

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 国有地をただのような値段で譲渡するという、非常に「経済的」な犯罪について国会でやりとりがあるにも関わらず、日経さんの社説はずっと見て見ぬ振りをしたままだ。

 どこが日本「経済」新聞なんだか。まあ、産業「経済」新聞なんてのもあるから、そういうものなのかもしれないが。

 ところが、今回のまったく経済的でない、というか知性的ですらない発言については、いきなり自民党に吠えかかっている。

 

 自民党国会議員はなぜ2009年に政権の座からすべり落ちたかを思いおこすべきだ。長年の自民党政権に嫌気がさした有権者の「懲罰投票」だったとされるからだ(小林良彰著「政権交代」)。

 この国民にしてこの政府あり、と古人はいった。この選挙区の有権者にしてこの国会議員あり、などといわれては当該選挙区の有権者にとって迷惑千万だろう。

 われわれの懲罰の一票が集まれば何がおこるか、自民党は心しておいた方がいい。

 

 急にどうしたんだ、という感じだが、日経さんはご自分のところで調べた内閣支持率政党支持率について、どうお考えになっているのだろうか。

 もしかして、この社説を書いた人は「あんな数字は信用ならない」とお認めになっている、ということなのだろうか。それならそうと、はっきり書いてくれたらいいのに。

 

背景には安倍1強体制のおごりやゆるみがあるのは間違いない。野党が弱体で自民党内でも対抗勢力がなく、政権へのチェックが働かない。

 

 その一強体制が出来上がってしまったことについて、日経さんはご自身にはなんの責任もない、としらばっくれるおつもりか。

 さらに、「政権へのチェック」を野党にばかり任せ、ご自分ではさっぱり動くつもりがないようだ。

 マスメディアがそんな調子で、チェックは野党にお任せ、懲罰は投票者にお任せ、という態度では、あの政権が真摯に反省などするわけがないとわかりそうなものだが。

  「懲罰投票」なんぞときゃんきゃん喚く前に、ご自分が批判すべきを批判するのが先なんじゃないのかね。

 

 

室内犬の飼い方・しつけ方

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近時雑感

 また日経さんが座敷犬モードになって、わんわん無駄吠え社説ばかり書いているので、たまには雑感を書き連ねてみよう。

 

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 トランプのチンピラモード発動中なわけだが、習近平との会談中にミサイル攻撃がなされたのは偶然ではなく、まさに「狙った」ものだろう。

 真の標的はシリアではなく、こっちではなかったかと思えるくらいだ。

 そして今現在、北朝鮮を巡ってごたついており、西太平洋にはカールビンソンとかいう空母がのっそりとやってくるという。

 そんな最中、日米は二国間交渉を行う。

www.asahi.com

 経済のゴリ押しについて、日本は応じない構えというが、果たしてどこまで通じるか。北朝鮮への恫喝は、こちらをスムーズにするのが本当の目的ではないかと勘ぐってしまうのだが。

 トランプは、高度な外交交渉などできはしないだろうが、チンピラヤクザの喧嘩のやり方なら承知している、ということだ。

 

 

www.huffingtonpost.jp

 非常に痛ましく、そしてやりきれない事件である。

 しかし、被害者が外国人少女である、ということに思い至る時、筒井康隆の炎上ツイートが改めて浮かび上がってくる。

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 こうして並べてみると、「保守」が究極的に何を「欲望」しているか、このツイートが赤裸々に暴露していると言える。

 それは「保守」が表現規制に熱心であることとまったく矛盾しない。むしろ後押ししているとすら言えるだろう。

 そのことはベトナムの少女を襲ったのが、保護者会の会長であったことにまざまざと現れている。

 

 

www.jiji.com

 へー、そんじゃ『共産党宣言』でも大丈夫だな。

 どっかの学校で『共産党宣言』を朗読させても、

教育基本法等の趣旨に従っていること等の留意事項を踏まえた有益適切なものである限り、校長や学校設置者の責任と判断で使用できる」

わけだから、なんの問題もないはずだ。

 

 

高校生でも読める「共産党宣言」

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