Yeah...We Dead...

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 砂漠で迷った男が、いきなりサボテンに抱きついたような大統領選だった。

 Yes, We Can! に始まりYes, We Did!で終わった8年間、日本よりずっとマシな政治の元、ずっとずっとマシな景気を享受していたアメリカが、深く静かに心を病んでいたことがあらわになった。

 

 とはいえ、もろ手をあげてオバマを賞賛する気になれないのは、トランプよりもっとひどい男の長期政権が続いていることについて、少なからぬ責任が彼にあるように思われるからだ。それは広島を訪問したからといって、拭い去られるものではない。 

 といっても、アメリカが強権的に内政干渉することで総理の首をすげ替えればよかったのに、などというウヨクのネガ焼きのような話とはまったく違う。

 例えば今こじれている「慰安婦問題」について、ホワイトハウスで日韓代表に握手させる、くらいのことがあってもよかったように思う。それはかつて、アラファトとラビンを握手させたよりも容易いことだっただろう。今更ケリーがくちばしをはさんでも後の祭りだ。

 今現在のゴタゴタは、問題処理能力のない双方に任せたため、年末年始でマスコミが休む(特に日本のテレビ)時期を狙ってバタバタと合意した、という「姑息」さに原因があると思う。

 堂々と合意していれば右派に拠点を置く政権の命脈は絶たれていただろう。ラビンのように身内に撃たれずとも、なんらかの形で辞任に追い込まれていたはずだ。

 

 それをしなかったのは、対北朝鮮問題において東アジアにさらなる混沌をもたらすのは得策ではない、という理由があったのかもしれない。が、結局事態はもっとひどいことになってしまった。この現状を焦げたクロワッサン頭の将軍様は、ほくそ笑みながら見つめていることだろう。

 今、東アジアに「理想」と呼びうるものは何一つなく、ごみ虫のクソのような「現実」があるばかりだ。

 しかもその「現実」は、この国にばかり重くのしかかっているのである。

 

 

When We Dead Awaken (English Edition)

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