発展途上国型経済成長
こうなるとは思っていたが、ずいぶんと遅かった。
発展途上国の経済成長率が高いのは、成長の余地が大きいからではなく、とりあえずごく一部の層がとてつもなく富裕になることで成し遂げられるからだ。
別に珍しいことではない。アメリカや中国を見てみればいい。経済成長は格差拡大によってもなされるのである。
で、このタイミングで共謀罪が採決強行された。
国民が多数の議席を与えたのは経済の改革を願ったからで、共謀罪成立を認めたわけではない。
しかし自民党は、参考書を買うと言ってもらったこづかいでエロ本を買う高校生のように、勝手なことばかりしている。
しかも、「アベノミクス」とやらの「毒」によって、国民には「自民党が弱くなるとせっかくの経済成長がダメになるぞ」と脅迫済みである。
戦前、高橋是清がリフレを行ったとき、やはり大幅な経済成長があった。
その時も失業率は改善したが、同時に格差もとんでもなく広がった。そのことについては、是清も演説の中で認めている。
当時もリフレ政策によって日本経済は立ち直ったように見えたが、格差拡大の状況は改善されず、むしろ改悪された。歩調を合わせるようにして、大陸では戦火が拡大していった。
昭和11年2月、選挙では右派政友会が壊滅的な敗北を喫し、左派無産党が歴史的な躍進を遂げた。
だが、その数日後に2.26事件が起き、この選挙の結果はうやむやとなった。
反乱将校たちがどれだけ御立派な理想を抱えていようが、しでかしたことはろくでもない結果をもたらしただけだった。
歴史は繰り返すだろうか? 繰り返すなら「喜劇として」だが、もはやみんな幸福によって笑うことを忘れ、他を蔑む笑いばかりがはびこっている。繰り返されるとするなら、舞台の演者だけが笑っている、お粗末で白けた「喜劇」だろう。
雇用情勢の改善は続いているものの、1人当たりの賃金が伸び悩んでいるからだ。賃金が低迷したままだと、個人消費の持続力に不安を残す。
この指摘があることは、なるほど日経さんの「経済」新聞の面目である。
しかし、現政権はそんなことを気にもしないだろう。
そういえば、GDPの計算法が変わったはずだが、もはやそんなことも忘れているかのようである。日経さんもね。
念のため追記しておくと、経済成長は必要だが、その「数字」ばかりを優先することは間違っていると思う。
成長すべきは「社会」であって、経済成長の数値はそれを図る「目安」だからだ。
テストで100点をとったからといって、その子の頭が良くなったとはいちがいに言えない、だからといってテストをないがしろにしていいわけでもない。そんな感じか。
社会が成長したその結果として経済成長はあるべきだ。
経済原理主義者は「経済成長を否定するお花畑ガー」と騒ぐようだが、否定しているわけではなく、本質を見失うなという話である。