「水喧嘩」していた時代をトリモロスということか
また「日経さん苦しそう」な社説である。
抱き合わせ商法のように、民営化と広域化を合わせて改正したわけだが、広域化については今更というものである。
法改正に先立って今年春から1県1水道体制に移った香川県
香川県の水道はかねてより問題が山積してしていたわけだが、「法改正に先立って」の事例があるなら、改正の必要について疑問符がつくだろう。
わざわざ変える必要があったのは、「民営化」と抱き合わせるためである。
改正水道法では自治体が水道施設の運営権を企業に委ねる、いわゆる「コンセッション」制度の仕組みを規定した。
ただの民営化じゃないよ、「コンセッション」だよ、とカタカナを使って印象を薄めようとしているのではないか、という疑問が頭をもたげてくる。
concession とは、譲歩、値引き、営業権、さらに「利権」の意味がある。water concession は「水利権」と訳される。
さらに、歴史的には「租界」の意味がある。上海法租界 Shanghai French Cencession が有名だろう。
Shanghai French Concession - Wikipedia
「コンセッション方式とは所有権まで譲渡するものではないから、そのような意味合いは持たない」
と強弁するかもしれないが、海外の事業体にその弁が通じるものかどうか。名は体を表すということをお忘れか。
日経さんが持ち出す「例」についても、情けなくなるほどしょぼい。
「民」の知恵を生かすことで、漏水検知にセンサーを取り入れるなど、行政にはマネのできない新機軸の導入が期待できる。
そんな程度のことも行政はできないのか。日経さんは常に、地方行政について無能扱いする。
公営事業につきものの単年度主義から解放され、水道管の更新など長期計画も立てやすくなる。
おいおい、単年度主義どころか四半期ごとに「見直し」があるのが「民」の企業ではないか。
長期計画こそ行政の役割だろうに。
浜松市の試算では公営のままでは今後25年間で水道料金が46%上がってしまうが、民間に委託すれば種々のコストが削減され、39%の値上げですむという。
結局上がるんかい。朝三暮四とはこのことである。
民営化後に上がれば、たとえその原因がそこになくとも「民営化」が槍玉に上がるのは目に見えている。そんなところにわざわざ進出してくるような「民」とは、どのような「民」か。日経さんの「企業性善説」ここに極まれり。
だいたい「種々のコスト」などというが、概ねは「人件費」であろうことは容易に想像がつく。
もちろん行政の役割もゼロにならない。水質が適正に維持されているか、委託した企業が突然破綻して、水の供給に支障をきたすことはないか、などを監視する機能は残さないといけない。
「水を値上げしすぎて、市民の生活を圧迫していないか」について監視する機能は残されないようだ。
もしかすると、地方では水道民営化が原因で不満が鬱積した時、水道事業を行う側は生活保護に矛先を向けることで、不満をそらそうとするかもしれない。生活保護は水道代が無料なのだ。
水道が整備される以前の時代、百姓たちの間では「水争い」や「水喧嘩」が頻繁に起こり、時には人が殺されることもあった。
もう一度あの時代をトリモロスことになるのだろうか。
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