ハイエクが今の中国を見たらなんと言っただろう
中国に対する日経さんの懸念は概ねもっともなものだが、それは普段に日経さんが主張するところの「自由」経済の主張について、疑問を呈せざるを得ないものとなっている。
明らかな独裁を強めつつも、それに対して一時期のような(反日デモが繰り広げられた時のような)不安定さが消えつつあるのは、もはや誰も否定しようがない急激な経済成長を成し遂げたことと、それに伴って生じた激烈な格差の拡大が収縮しつつある(消え去ってはいないし、永遠に消え去ることはないだろうが)ことによるだろう。
果たして、独裁と自由経済は親和するのか、どうか。
それについては、「自由」の守り手を自認するハイエクは、このように述べていたそうだ。
As you will understand, it is possible for a dictator to govern in a liberal way. And it is also possible for a democracy to govern with a total lack of liberalism. Personally, I prefer a liberal dictator to democratic government lacking in liberalism.
「…ご存知でしょうが、独裁者が自由な政府を作ることもありますし、同様に民主的な政府が自由を阻害することもあるのです。個人的には、自由な独裁者の方が不自由な民主主義よりマシだと思いますがね。…」
ハイエクが独裁者ピノチェトを賞賛していた、というブログ・エントリーは数年前に見ていたのだが、それ以降も論争が続いていたとは知らなかった。全くこれはうっかりしていた。
それはともかく、上記のハイエクのセリフをこの部分だけ取り出してみると、現在の習近平による中国とトランプによるアメリカを比べた場合、ハイエクは中国の方に旗を上げるに違いない。うざったいくらいに「保留事項」を付け加えた上で、となるだろうが。
実際、こと「経済」に関しては、グローバルな視点からは、中国こそが自由経済の守り手、という立ち位置になっている。
日経さんもハイエクと同じく自由経済至上主義を貫くなら、「中国ホーイモー」などという幼稚な思惑から外交を繰り広げる現政権について、態度を改めるのが筋というものだ。
さらには、その実態は「中国ホーイモー」である、という言い訳によって「保守」陣営を取り込んだTPPについて、アメリカに替わって中国を取り込むことを、真剣に提案すべきではないだろうか?
つまり何が言いたいかというと、日経さんの「自由経済至上主義」は、それほど徹底したものではなく、旧来の「保守」をそれよりも優先する程度のものだ、ということだ。
では、「保守」のもとでも自由経済は機能するだろうか。
日経さんは、機能するし現にしている、と言い張るだろうが、現状でその「自由」を満喫しているのはごく一部の人間であり、経済は「規制」ではなく「歪曲」されている。
このような状況下にあって、それをもたらす元凶を「信じている」態度に、まずは反省が求められてしかるべきではないのか。
私個人としては、独裁下においてどんな「自由」が許されていようが、それは後頭部に常に銃口を押し当てられた上での「自由」であり、全くもって願い下げだということだ。
たとえ不自由であっても、民主体制の方が将来に希望が持てる分、マシであると考える。
しかし、現在の日本はそうでもない人が多いようだ。