保護主義とは一体何を保護するのか

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 さて、懸念した通りロクでもない事態になりつつある。

 ロクでもない事態とは、「好景気」である。

 もちろん日本のことではない。あの腐ったラードを頭に乗っけた男が指揮をとるアンクル・サム(この呼び名もとんと聞かなくなった)のことだ。

 トランプに反対するグローバリストたちは「トランプのような保護主義が蔓延すれば、とんでもない不況がやってくるぞ!」と呪詛を繰り返していた。が、さっぱりその気配が見えないどころか、米国の成長率は絶好調である。

 日経さんは「経済的」に文句をつけられないので、

 

20世紀には主要国が高関税による経済ブロック化に突き進んだ末に、軍事的な対立が深まって第2次世界大戦につながった。その教訓から戦後に少しずつ前進してきた自由貿易を柱とする国際秩序を壊してはならない。

 

 などとおっしゃる。

 当時の経済ブロック化の背景には、大不況があったことをお忘れのようだ。

 

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 そのトランプの強運も、流石に陰りが見え出した、ように見える。株価が下がっているのだ。原因は中国と角突き合わせていることである。

 だがトランプは、そんなことは意に介さない。中国をやっつければすぐに回復する、いや、そうでなくてもそのうち回復する、と信じているからだ。

 で、実際にそうなりそうな気配である。

 アメリカ人の多くは、グローバリズムだろうが保護主義だろうが、自分さえ儲かればいいのだ。そのため、経済を盾にしてトランプを攻めるのは無理筋となりつつある。

 現に、今度の中間選挙民主党が勝利したら株がさらに下落する、との予測も流れている。

 

 だいたい保護主義というが、何を保護するのか。

 それは富裕層の利益である。

 アダム・スミスも、政府は富裕層の利益を守るために存在する、と『国富論』で述べている。

 では、グローバリズムはどうかというと、やはり同じである。

 グローバリズムがごくごくごく一部への富の集中を加速させたことは、様々な研究から明らかになっている。

 つまり、保護主義だろうがグローバリズムだろうが、そんなものは同じ穴の狢なのだ。金の行く先がちょいとずれるだけである。

 

 かくして、ピケティが暴いたr>gに則り、格差はどんどん開いていく。

 格差が開くと何が起こるか。

 「バカが増える」ということが起こる。

 それが資本主義の根本であるならば、マルクスが期待したような革命は来らず、バカのバカによるバカのための政治が蔓延する、という事態を招来する。

 

今後の経済の方向性を示す中国共産党の重要会議が近く開かれる。経済政策がテーマの中央委員会第4回全体会議(4中全会)である。対米関係が厳しいなか、どんな具体策を打ち出すのか。そのコミュニケに注目したい。 

 

 もはや、一党独裁エリート主義の中国共産党に期待するしかないのか。

 なんともロクでもない、どこにも希望が見えない時代となりつつある。

 

アダム・スミス『国富論』を読む (岩波セミナーブックス S13)

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