円高で日本をトリモロスか?
馬齢を重ねるにしたがって、届く賀状から嬉しさが減るものだ。ただのお付き合いや、頼みもしないし返事も出していないのに送りつけてくる、そんな類のものが増えるからだ。
特に政治家、さらには自民党の議員からのものにはうんざりさせられる。
謹賀新年
無資源国の日本にとって原子力発電は国のかなめ
本年も引き続き再稼働を応援してまいります。
てな具合である。
一応は私信なのだから勝手に公開するのもどうかと思ったが、「公益性」を鑑み、名を伏せて引用させてもらうことにした。「かなめ」が平仮名なのは、人をなめてるのか。
上記の報道の通り、日本の原発輸出は総崩れである。
Fukushima以降、安全対策に費用がかかるから、という解説で、他に見かける「ヒョーろんか」先生方の論もほぼ同じ分析である。
で、政権からの「原発輸出はアベノミクスの成長戦略の柱」という、大仰なかましについては無視を決め込んでいる。そりゃ「柱」がぼっきり折れたら、どうしたもんだかわからないからねえ。
実はここに、あべぴょんの経済理解が小学生並みだ、ということが現れている。みんなここに触れないのは、「バカにバカっていう奴がバカ」という誹りを恐れているからだろうか。私は恐れないので、素直に「バーカ」というだけである。
原発輸出を国家が強く後押しするようになったのは、鳩山政権の頃だ。みんな大好き自民党政権ではなく。
鳩山は円高容認発言などもあり、「ミスター円高」などと呼ばれたこともあった。
円高下における輸出企業の生き残り策として持ち上がってきたのが、プラント輸出である。プラント輸出とは、大規模な生産システムを丸ごと引き受けて建設することで、原発もそのカテゴリーに含まれている。
規模がでかいだけに、初期の資金調達が重要となるので、むしろ円高の方が有利になるのだ。
ところが、アベノミクスの金融緩和で急激な円安になった。
日本の輸出企業は史上空前の利益をあげた、ということだが、同時にプラント輸出の方は非常にやりづらくなった。
原発以外はやれてるとこもあるが、どこも大幅に事業を見直している。
昨年、プラント輸出を促進する法案が可決した(共産党のみ反対)が、日立の件には間に合わなかった。というか、国交省の権限が拡大する法案なので、これからはプラント輸出について経産省の権限が狭められることもありうるだろう。確実に言えるのは、公明党の利権が拡大し、自民・公明の癒着が一層強固になった、ということだ。
話を戻すと、「原発輸出をアベノミクスの成長戦略の柱にする」などというのは全く矛盾した物言いで、いかにあべぴょんが経済を理解していないかという証左なのである。
皮肉なことだが、円高のままであれば、東芝の「のれん代」も問題にならなかったし、ベトナムもトルコも、そしてイギリスも順調に原発輸出が進んでしまったであろう。こうしたことを考えるなら、アベノミクス様様だと憫笑することもできる。
だが、自民党は冒頭の賀状にも見られる通り、原発を全く諦めていない。
年頭、原発輸出最後の砦だった日立の、経団連会長でもある中西はこのように述べた。
東京新聞:「原発 国民反対なら無理」 経団連会長、政権と同調姿勢転換:経済(TOKYO Web)
「東日本大震災から八年がたとうとしているが東日本の原発は再稼働していない。国民が反対するものはつくれない。全員が反対するものをエネルギー業者や日立といったベンダー(設備納入業者)が無理につくることは民主国家ではない」と指摘。
それから舌の根も乾かぬうちに、180度発言を翻した。
停止中の原子力発電所に関し「再稼働はどんどんやるべきだ」と述べた。「再生可能エネルギーだけでまかなえるとは思っていない」とも語った。
この豹変ぶりについて、政権から圧力があったのは火を見るよりも明らかだが、ただの恫喝だけではこうも綺麗に手のひらを返せまい。
何らかの「約束」が政権側からもたらされた、と考えるべきだろう。
とにかく原発について、国家をあげて後押しする、と政権が約束したいうことだ。
その内容がどんなものか詳らかではないが、数千億の損失など消し飛ぶレベルのものだろう。
しかし原発輸出については、日本政府が少々ケツ持ちしたくらいじゃ追っつかないと、今回のイギリスの件でわかったはずである。
ではどうするか。「出口戦略」などと言いつつ「新しい判断」で「円高を容認」したりするのだろうか。
ありえない、と断言してやりたいところだが、とにかく相手は想像を絶するレベルの「バカ」なので、何をやらかすかわからない、というのが本当のところだ。
ブログの方向性をどうするか、まだ定まってはいないが、とりあえず吐き出してみた。